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吉原食糧株式会社
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季節のたより

なぜハイブリッド小麦粉なのか?~遠くて近い思い出~

先週、11月15日 当社の「ハイブリッド小麦粉シリーズ:讃岐プレミアム等」が、食品産業技術功労賞を頂き、その授賞式に東京・上野へ行ってまいりました。

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授賞式に着席した私は、平成8年に小豆島の農家に頼んで初めてお気に入りの小麦の種を用意し、植えてもらった頃のことを思い出していました。
さぬきの夢2000が登場する4年前のあの頃、ひっそりと、そしてほとんど誰も気を留めることのなかった香川県の小麦。.....(続く)

今回は、気のおもむくままに、思い出を交えて自由に書いてみようと思います。
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平成8年、私の気に入りの小麦「チクゴイズミ」を他県から取り寄せて、農家に頼み込んで小さな畑に植えてもらい、買ったばかりの石臼機で挽くというママゴトのような12年前のスタート。その当時、香川県では「ダイチノミノリ」という小麦の時代。「さぬきの夢2000」というそれまでにない優秀な特性を持つ小麦が世に出て、これほど注目されるとは夢にも思っていませんでした。

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    【平成9年6月5日 小豆島で初めて収穫したチクゴイズミの穂】

ただ、なんという偶然! さぬきの夢2000の母系の小麦はその「チクゴイズミ」の系統だったのです。だから、私はさぬきの夢2000の誕生の時から、真面目に他人とは思えない親しみを覚えていました。さぬきの夢2000は、その生まれからして、私の好きな小麦のタイプだったのです。

当時、国内産小麦はいわゆる”厄介者扱い”で香川県でもご多分に漏れず、今のような暖かい目で見られることなどとんでもない、香川県産小麦の存在すら、県内でも一般には意識されていませんでした。一方で、さぬきうどんは、香川県産小麦で作られていると信じられていた時代。それほど、香川県の小麦は現実から遠く離れてひっそりと生きながらえていたのです。(その後、品種改良が進み、品質の高い国内産小麦が普及するようになりました。)
当時、そんな状況下、香川県の小麦に熱意をもっていた私は、確かに変わり者だった。実際、社内でもそう言われましたし。
「県下のどの製粉会社も、麺業者も欲しがらない地元の小麦に熱をあげるとは、おかしいんじゃないか。」
「やめとけっっ!」....実は、当時の会社の代表に、私は怒られてしまった。<-_->

実際、当時の香川県産小麦の小麦粉で作るうどんは、”噛むとプツプツと切れる”ような貧弱な食感で、県産小麦でさぬきうどんの小麦粉を開発しようとしていた私の立場は実際苦しかった。作っても、売れない取り組みは非難されても仕方ない。
で、スポンジケーキ用の小麦粉(粘りを徹底的に無くして、流れるような生地にする)を開発して、大川食品(当時JA系列)と砂糖も北海道の「ビート」という、当時はまだ珍しかった、全て国内産原材料のカステラ「大地」を作ったりしました。カステラ「大地」は(名前が今思うとすごい! 嗚呼堂々の商品名である^^;;)、原宿のラ・フォーレで、紹介されたりもしましたが、やっぱり私は、香川県産小麦でさぬきうどんとしての用途をなんとしても見出したかった。それが、本来の姿なのですから。

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さて、前置きはこれくらいにして、授賞式で、ある方から「ハイブリッド小麦粉」をなぜ思いついたのか、などの質問を頂きまして、それに対して私の思いを以下に書きたいと思います。
前期の内容と ちょっとダブルかもしれませんが、「なんで、ハイブリッドなんや?」という疑問に対してのひとつの答えになってくれれば、という思いで書きます。

?@商品を思いつくに至った経緯

10年ほど前の平成9年頃、小麦粉の開発を行っていた私は、さぬきうどんの食感の嗜好性が変化していることに気づくきっかけを得ました。というのは、当時、香川県の市場では強めな弾力がさぬきうどんの食感の絶対条件と思われていたし、私自身もそう信じていました。しかし、たまたま私が自分の好みの食感に仕上げた、従来型のしっかりした弾力の強いうどんとは違う、口あたりの良い、どちらかというともちもち感の強い小麦粉を、「おそらくは否定されるだろう」と試験的にうどん店に出してみたところ、思いがけず高い評価を受けたことがきっかけでした。

なぜ、当時の流れに反するような、そんな“もちもち感”の強い小麦粉を作ったのか。それは、過去の香川県産小麦の粘弾性の低い、噛むとプツプツ切れるような、あえて言えば貧弱な食感のため、それらを使って開発したうどん用の国内産小麦粉がことごとく、散々な評価しか得られなかったことに対する反省と、なんとかしなければという強い使命感のようなものが背景にありました。反骨心も少々・・・いや、実はかなりあったと思います。当時は、先述のように、国内産小麦は本当に「厄介者」扱いでしたから。
しかし、私は国内産小麦の優れた部分をなんとか、引き出したかったのです。

平成8年に、小豆島の農家に私の気に入りの小麦の種を撒いてもらって、少量を翌年初夏に収穫して、買ったばかりの石臼機で挽くというママゴトのようなことをしてなんとか活路を見出そうとしていた時期でした。とにかく私は、国内産小麦を使った、次世代のさぬきうどんをどうしても作りたかった。

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    【平成9年6月5日 初めて自主的に植え、収穫したチクゴイズミ:初めて群生を
     見た時の感動は忘れません。】

その後、「さぬきの夢2000」小麦の開発プロジェクトチームに加わった時も、この思いはすごく強かったのです。

さて、これらの取り組みを進めていくうちに、さぬきうどんという日常の中で食べ続けられている伝統食品の嗜好性も変化していくのだということに気づいた時は、本当に驚きでした。自分の開発する小麦粉製の中で、評価の高い製品の特性が少しづつ変化していることが、それを如実に表していました。
「ハイブリッド小麦粉」のコンセプトと製造方法までたどりつくには、まだその後、何年もかかりましたが。

讃岐の消費者は、「硬いだけ」「柔らかいだけ」といううどんの単純な食感を好みません。
もちもち系の食感を好む傾向があったとしても、やはりそれだけでは讃岐うどんとして評価はされず、適度な弾力も必要なのです。いわゆる「複合感のある食感」です。

それらの小麦粉の試行錯誤を続けていくうちに、ASWだけ、国内産小麦だけという純粋主義でなくてもいいのではないか、むしろ 異なる特性を掛け合わせて、うまく相乗効果を引き出した方が、かつてない、さらに磨かれた現代のさぬきうどんの食感が生まれるのではないかと思い始めました。

いわゆる「融合」の考え方です。これは「共生」という考え方にもつながっていきます。
「勝ち負け」ではない世界です。

新品種小麦「さぬきの夢2000」が世にリリースされた時、“ASWを凌駕した”とか“ASWに優った”という表現がされた時期がありました。
今も昔も「さぬきの夢2000」を育て上げたいという気持ちが強い私ですが、しかし、その“競い合わせる”考え方は、当時からさぬきの夢2000のためにならないと思っていました。さぬきの夢2000以前の小麦を素材として、うどん用小麦を開発してその難しさを多少は実感していた私は、最終的には消費者が(結果として)小麦を選ぶことになる、と考えていました。つまり、消費者が美味しいと選択するさぬきうどんであることが絶対条件なのです。

私は、ASWの40年以上に渡る日本市場での実績と(日本市場におけるオーストラリアの努力も)、そしてその小麦商品としての高い完成度は大変な重みを持って存在していることを痛感していました。壁はとてつもなく厚い。そうやすやすとASWの世界を動かすことはできません。
見方を変えると、突破しようとするから、壁はとてつもなく厚くなるとも言えます。「突破」ではない違う道、方法論はないのか?このことが、小麦粉開発作業の中で、いつも頭の中にありました。

そして.....私はさぬきの夢2000のうどん作りに熱中しました。確かに、さぬきの夢2000は、ASWにはない優れた特徴も持っています。日本人の好む“もちもち感”や滑らかさ、かすかではあるが口中で香る風味。これらを、なんとしても活かしたかった。私は、生まれた時から製粉工場の中で育ったようなものだから、香川県の小麦の茶褐色の色合いの記憶や、麦の匂いが体に染みついている。なんとか、この小麦を活かしたいという強い思いは相変わらず強く根底にありました。

そこで、ASW、国内産小麦それぞれの特性を細かく切りぬいていき、その異なる特性を掛け合わせることによって、よりダイナミックな、新しい食感を実現する手法の着想を得たのです。そのためには、製粉システムの改良も行う必要がありました。そして、その異なる、優れた特性を融合させた小麦粉を、「近未来への夢」の気持ちをこめて、「ハイブリッド小麦粉」と呼ぶことにしました。

?A開発段階で苦労?

1+1が2にはならないこと。
異なる特性を掛け合わせても、なかなか思い通りの食感が実現できないこと。
それに対して、明確な食感イメージを頭に持って、あきらめずに、試行錯誤を繰り返すことしかありませんでした。
でも、人間は苦しいと感じるだけではなかなか先に進めないので、ある種の“楽しみ”を開発行為の中に見出していく必要があると思います。
そんな時、「近未来」とか「次世代」という“次なる”イメージは、ある種の“夢”や“楽しさやリラックス”を私たちに感じさせてくれました。

?B今後の展開、課題など

私たちは、21世紀型のさぬきうどんの食感・食味特性を追及し、製品化を進めたい。
「変化するさぬきうどんの食感・食味の嗜好性。その変化の先には、何があるのか。」
これを追い続けるのが、当社の小麦粉開発の基本テーマです。

うどん特性のバラエティ化を実現する小麦粉を開発することによって、さぬきうどんの食感・食味の世界を、点ではなく、線にし、更に面として広げていくお手伝いをしたい。そのことが、さぬきうどんの食味・食感を含めて、さぬきうどんという食文化を広げ、深めていくことになれば誠に幸いです。

私たちは、明治から香川の地で長く麦加工をさせて頂いてきた歴史を大切にして、未来に向け、より立体的な「さぬきうどんの味わい」のご提案を今後も、小麦粉素材加工の立場から続けさせて頂きたいと考えていますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

掲載日 : 2008年11月18日