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吉原食糧株式会社
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小麦と日本の“食”

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【レポート : どうなる?日本の食糧 (7)】 ~輸入小麦の売渡価格30%値上げ決定。30%の意味と決定に至る背景とは。

2月15日、農林水産省は、輸入小麦の販売価格(製粉企業への政府売渡麦価)を主要5銘柄について4月から、30%引きあげることを遂に!!発表しました。

ASW収穫 280.jpg

「遂に」と言うのは......

当初、去年12月後半に価格を発表という予定が、2月15日まで延びたことと、30%という大きな値上げ幅を決定したからです。これだけ発表が延びたのは、国民(消費者)の生活に与える影響を重くみたこと、去年10月の価格改定の浸透について等の多面的な議論をした末の決定であろうと思います。
さて、30%という値上幅の意味とは。決定に至る背景とは。
 
去年、24年ぶりの小麦価格の値上げということが盛んにニュース等で報道されました。平成19年4月に平均1.3%(うどん用のASW小麦は5%の値上)10月に全銘柄平均10%の値上げがあったばかりのため、この平成20年4月からの30%値上げ幅は相当な値上げとして、製粉業界や卸業界、パン・麺・菓子など2次加工業界、流通業界に深刻な状況として捉えられています。

今まで「どうなる?日本の食糧」シリーズで書いてきましたが、国から製粉企業への輸入小麦の売渡方式が去年4月に、それまでの標準売渡価格制度から価格変動制(国際相場連動性)に大きく変わりました。
このことについて、農林水産省の資料がわかりやすいので以下に載せます。

売渡制度変更のイメージ3500.jpg
                       【農林水産省 作成資料】

戦後初めて、売渡価格制度を抜本的に改正した途端に、この異常とも言える小麦相場の高騰に直面しているというのが実情なのです。新しい価格変動性の制度を設計した農林水産省の担当の方も、ここまで小麦相場が高騰する局面は想定していなかったと思います。

なぜ、日本が価格変動性を導入する必要があったかは、、【どうなる?日本の食糧 ①】 ~ 最近の食品の価格変動の背景にあるもの ~」をご覧ください。

さて、この30%という上げ幅は、どういう意味合いがあるのでしょうか。
まず、2005年1月から今年2008年1月までの3つの穀物のシカゴ相場の推移をみてみましょう。青い線が小麦の動向です。
 
H20.2.18 シカゴ相場の推移3500.jpg
                        【農林水産省 作成資料】

去年2007年1月に1ブッシェル(=27.215 kg) 5$程度だったものが、1年後の今年2008年1月には10$超えと、2倍強に跳ね上がっています。
2年前の2006年1月に比べると、3倍強になっています。これは、異常ともいえる価格高騰です。

この穀物相場の高騰の理由や背景は、【どうなる?日本の食糧 ③~⑤】をご参照ください。

去年1年で見ると、シカゴ相場では2倍(100%増)の値上げ幅が、日本国内に輸入される時は、去年2回の値上げ(4月1.3%、10月 10%)で11.43%(=1.013×1.1)の値上げ幅、つまり11%程度の値上げに抑えられていたということになります。

値上幅の価格の算出の基礎として正確には、改定月(4月と10月)の3ヶ月前から遡って8ヶ月間のシカゴ相場の価格平均をとります。穀物相場の変化が直接的に売渡価格に反映しないよう、農林水産省が定めた計算方式で、価格変動をある程度均(なら)しているわけです。
この計算からいくと、この4月の輸入小麦の値上幅は、本来なら前回の10月の改定(値上げ後)価格に対して38%の値上げとなるのですが、それが30%に抑えられたということにはなります。

去年の2回の値上げ幅に今年4月からの30%を加えると、結局去年4月以前の価格に比べて約45%の値上げということになります。これは、ほぼ2倍強になっているシカゴ(国際)相場値上幅(率)が、国内の販売価格比では45%程度の上げ率に抑えられていると見ることもできます。

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さて、輸入小麦の価格が異常に高くなり、日本の輸入小麦の買入れ/売却のバランスが大きく変わってきていることがわかる例があります。ここ30年以上に渡って、私たちの製粉業界が注目してきた「内外価格差」です。

「内外価格差」とは、一言で言うと.....
「国が製粉企業に売る輸入小麦の価格」 ÷ 「国が買った輸入小麦の価格」 = 価格比のことです。要は、買った額と売った額の価格比です。

この内外価格差は、平成2年にはなんと2.7倍、平成14~16年には2.0倍、平成17年には2.1倍ありました。(アメリカ産ソフト小麦の例。他の小麦銘柄も同じようなレベル)。つまり、輸入小麦はシカゴ相場の2倍~2.7倍の価格で、日本国内で販売されていたわけです。

例えば、2年ちょっと前の平成17年には、トンあたり20,291円(アメリカ産ソフト小麦)、23,381円(オーストラリア産小麦)で購入して、国内でそれぞれ43,190円(2.1倍)、44,140円(1.9倍)で売却されました。この差額は、マークアップや港湾諸経費として徴収され、マークアップは国内農業の施策の原資として活用されてきたのです。

しかし、今や購入価格(シカゴ相場)が53,000円とか57,000円(小麦銘柄によって価格は異なる)に跳ね上がってしまった。その状況下で同じ額のマークアップや諸経費を上乗せしていたら国内での販売価格は大変な額になってしまう。そこで、値上幅を30%上昇にとどめて、値上げを圧縮したわけです。

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では今回の4月値上げ後の「内外価格差」はどれ位小さくなるのでしょうか。

直近の2008年1月の小麦買入価格から計算すると、1.05倍。限りなく国際相場に近づいています。しかし、それは小麦買入価格がどんどん上がっている中での状態を示しています。床がどんどん上へ上がって来るのに、上へあまり伸びていけない(買入価格上昇に見合う値上げができない)状態とでも言いましょうか。

20年程前、製粉業界の代表が国会で「内外価格差を1.3倍程度に縮小し、小麦コストを国際相場に近づけて、国際的な価格競争力をつけるべき」と主張した時代から考えると、1.3倍を遥かに下回る"夢のような数字"となりました。

2倍ほどあった内外価格差が、一挙に1.0に近づいたこの一年の動きを見ると、どれだけ小麦価格が高騰し続けているかを実感します。
しかし、国際相場に購入価格が近づくといっても、コスト減つまり安くなるのではなく、高値での飽和状態の様相を呈しているのですから、大変な状況下にあることを示しているわけです。

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さて、これらの状況を見ると、日本の「(小麦の)国家貿易制度」が、結果的に新しい役割を果していると見ることもできるのではないでしょうか。
先ほど書いたように、今までは国内産に比べて、全般的に価格水準の低い輸入小麦を購入し、「マークアップ」という徴収額や、港湾管理費を乗せて、国内の製粉企業に売却していました。「マークアップ」は、国内農業に対する予算の原資として活用するシステムとして機能してきたのです。
(昔はよく使われていた「内外コストプール方式」という表現を思い出しました。ある意味、懐かしい....)

今は、高騰する小麦の国際相場から、国内への直接的な価格高騰の影響に対するクッションとして機能しているとも言えなくもない。苦渋の選択かもしれませんが。
いわば、緩衝材.......激変緩和措置(バッファー)の機能です。ただ、予定していた歳入「マークアップ」の不足分は一般財源によってまかなわれます。

一方、輸入小麦の販売価格(4月、10月の売渡麦価改定)の算定時に、設定されていた「値幅制限」。これは、小麦の販売価格が乱高下しないように「小麦相場がどんなに上昇・下降してもここまでの幅に抑える」という安全弁的措置なのですが、これが今回の30%値上げ決定に際して、国から正式に言及されることはありませんでした。
例えば、価格変動性に移行した去年の4月には、±3%、10月の改定時には±10%という値幅制限がありました。小麦相場の異常とも言える価格高騰を前に、事実上その取り決めは語られなくなってしまいました。

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24年間、日本は輸入小麦の国内販売価格を下げ続けてきました。その流れの中で、小麦の加工食品の価格はなだらかな値下げ傾向が続き(いわゆるデフレ傾向)、しかも小麦の価格改定が数年単位のレベルでゆっくりとしたペースで実施されたため、下げ傾向の中で食品価格は安定したのです。

私たち日本人は、「食品価格は比較的安く、安定しているのが普通の状態」と、この20年以上にわたって当たり前に考えてきました。
それが、いよいよ食品価格の下落傾向が底を打ちし、価格上昇に転じました。それも大幅に、しかも速いスピードで。この動きは世界的なものです。そして、それは輸入に頼る日本の特異な「食」の構造を、ある意味で明らかにしつつあります。

今後、日本の食品産業の構造はどう変化していくのでしょうか。そして、何より消費者の皆さんがどのような消費行動をとっていくのでしょうか。価格上昇の中で「食品の価値観」や「選択の動機」「購入の基準」は変わるのでしょうか。消費者は、「食品の価格」と「食品の安全性」の関係をどのようにとらえ、購買していくのでしょうか。
今年が、日本の全・食品産業、もちろん製粉業界にとって厳しい変化のスタートの年となるのは間違いないと思っています。

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                                                             (R.Yoshihara)

掲載日 : 2008年2月18日